■古(いにしえ)の伝記物と萌えの結合■「神様ドォルズ」
作:やまむら はじめ
連載:サンデーGX (小学館)
定価:¥ 560
ストーリー:★★☆☆☆
画力:★★★★☆
キャラクター:★☆☆☆☆
構成力:★☆☆☆☆
遠藤のツボ:★★☆☆☆
総合:★☆☆☆☆
※詳しい評価基準はこちらの採点項目をお読み下さい
~あらまし~閉鎖的な故郷を離れ、東京で一人暮らしを始めた大学生・匡平(きょうへい)。平凡な生活を望む彼にとって大学生活は安息の日々でした。好意を寄せていた同じ学生友達の日々乃(ひびの)さんに告白をしようとした矢先、斬殺死体を発見してしまったことで平凡な日常は終わりを告げます。故郷の村からやってきた妹の詩緒(うたお)は、この出来事が同じ村から匡平を追ってきた男の所業であることを明かします。そんな詩緒の傍らには異形の傀儡人形がいて……。匡平の村の秘密とは、今、物語が始まりを告げます。
~レビュー~表紙の萌えチックなイラストと中身の硬派な伝記要素がこれでもかというくらい正反対な印象を受ける1作です。
まず
視覚的萌えはあっても内容的萌えは全くといっていいほどないと位置付けておきたいと思います。
萌えがあればいーのかとかなければいーのかとかそういう議論をしたいわけではないですが、もう少し読者に作品のビジョンというか方向性を提示して欲しいと思う作品かな、と。
作品の概要は上記のあらましで確認いただくとして、鍵となってくるのが傀儡人形とも呼べる人外の人形です。
主人公の故郷の村ではこの人形を神様と位置づけており、それを操る(傀儡子?)者を一種の巫女様のような存在として崇めています。
そうです、その村に伝わる秘業が一般社会に漏れ出したというか、村を出た主人公に追随するように広がったことでどう作品に引き込ませていくかが作品の魅力になってきます。
率直な感想としてレビュー現在での4巻ではいまいちどう盛り上げていこうとしているのかの作者の意図が見えてこない側面があるのですが、決して作品として面白くないというわけではなく、惜しいなと感じさせる作品です。
惜しいという視点からもっと作品として面白く盛り上がって欲しいという想いを込めて見ていきたいと思います。
人形を操る者が能力を引き出すことである種の殺人兵器として存在しているこの傀儡人形ですが(作品内では案山子と言われています)、バトル要素として使われる側面をこの人形が担っていると言えるでしょう。
そして主人公が村を離れた理由を中心に徐々に語られる全容は伝記作品としての良さを熟知している作品の展開で、掴みには成功しているなと感じます。
伝記作品に付きまとう、どんよりした空気を一新するためかヒロインも2人用意されており、表紙の画像の2人になるわけですが、これが世間一般でいうと萌え要素なのでしょうか。
巨乳とロリ……あざといと思いきや、最初にも述べたとおり視覚的な面だけで至極作品に萌え要素は介入してこないため、その抑えた点が作品を良い方向に導いてくれているように思います。
さて、中心になるのは人外の人形によって物語がどう動くかにあるのですが、この辺りが惜しい。
人形を能力と見立てた能力バトルが初期から展開されるのですが、安易に走りすぎているのではないかと感じました。
個々の特殊能力の描写もあまりないだけに、バトルとして読者を魅了するにはやや弱し。
かといって人形に莫大な、それこそ世界を揺るがすような力があるのかといわれればそうでもない。
いや、今後そういった面が出てくるようなニュアンスは掲示されてはいますがパンチ力に欠けるという意味でです。
絵柄が今風であることや評価が軒並み良い印象だったこともあり購読を決めた作品でしたが、これは失敗だったのかと。
しかしです。主人公達の過去編に物語が突入した辺りから伝記としての良さが活き活きと表現され始めました。
恐らく作者としても当初から温めていた内容ではあるのでしょうが、これがまた王道の話ながら読ませる内容。
これまでは購読を始めたわりに付き合っていくにはちょっとなぁと思う作品であったのですが、なかなかどうして今後に期待をしたい作品にこの時私の中で変わったような気がします。
恋愛も上手く描写出来そうなポテンシャルを持っているのにあくまでバトル伝記で通す選択をしている以上は展開として飽きさせないよう物語(ストーリー)として面白いものを展開していって欲しいと思います。
話で魅せるのならば、下手にバトル作品にせずに伝記の空気を強く全面に推し出して欲しい作品と位置付けたい所。
惜作で終わってしまうのかこっから化けるのかまだ何とも判断を現時点ではつけたくない作品ですが、まずまず楽しめる作品。
あまりとりあえずは楽しめるみたいなことは言いたくはないですが、率直に期待値を越える面白さを読者としてまだ見せていただいていないという思いが強いため、こういった評価になりました。
それだけのポテンシャルを秘めている作品だと思います。
皆さんも、
日々乃(ひびの)さんのおっぱいがあれば言うことないんだなんておっぱい脳に支配されないよう物語として盛り上がっていっていくように祈りましょう。
あぁでも、おっぱいを視覚的にあそこまでアピールされたら陥落するのも仕方ないね。
と兄貴の精神も持ち出さざるを得ませんね。
とか言ってますが、再三の内容で物語は至極真面目なので萌え系作品は読まないとか判断しないようにお願い致します。
むしろ真逆の作品に萌えが引っかかっている感じで、間口は広い作品だと思います。
※新刊レビュー→
5巻※このレビューは4巻まで既読時のレビューになります
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