漫画レビュー~遠藤ってば!~

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イキガミ

                久保先生……6巻まで通して読むべきですね、ほんと

■感動?涙?確かに、けれども!■

「イキガミ」
作:間瀬 元朗
連載:週刊ヤングサンデー(不定期連載・休刊、移動)→ビッグコミックスピリッツ
定価:¥ 530(一部¥ 540 )


ストーリー:★★★★★

画力:★★★☆☆ 

キャラクター:★★☆☆☆ 

構成力:★★★★☆ 

遠藤のツボ:★★☆☆☆ 

                              総合:★★★☆☆

※詳しい評価基準はこちらの採点項目をお読み下さい


~あらまし~
「国家繁栄維持法」というこの法律は、国民に「生命の価値」を再認識させることで国を豊かにすることを目的としていて、こどもの頃にある注射をしてこれが一定の年齢になるとおよそ1000分の1の確率で選ばれた若者は死んでしまう。そんな恐ろしい設定が舞台の国の話です。いつ死が迫るかというのが政府には分かり、死の一日前に「逝紙(いきがみ)」と呼ばれる死亡予告証を渡すことを仕事にしている部署で働く人物を主人公として物語が展開されます。

~レビュー~
パラレルワールド物に倫理観が混ざると議論が沸きやすいなというのが読み進めていてふと各所で話題に挙がっているのを垣間見た際の印象でした。

この作品は、どういう視点で捉えるのかによって感じ方が変わってくる作品であると思っています。
ゆっくり紐解いていきながら魅力を追えたらと思います。

まず作品内には物語の変わり目があり、現在レビュー時点での6巻まででのお話をさせていただくならば、4巻までと5巻以降で物語の流れが変わってきているのです。
元々、この作品が数巻目から帯などで謳い文句のようにプッシュしていた内容は、魂揺さぶる究極極限ドラマと題して「いま、一番泣ける物語」と称していたことです。
もちろんその謳い文句に習ったように、3巻までは後1日しか生きられない若者達の行動をドラマチックに描いていました。
それにこそ焦点をあてて。

漫画を読む際にはフィーリングで楽しむ層と枠組みを承認しながら楽しむ層(表現が抽象的で申し訳ないです)がいると思うのですが、
前者にとっては命に関わる描写を鬼気迫る形で描いていて胸にくる漫画だともなり、あれこれ考えずに奇抜な設定を楽しめるかも知れません。
後者にとってはそもそも人々の暮らしを支える国家が、個人の尊厳や自由に関わるこの法律を国の枠組みとして容認しているにも関わらず現実世界と同じような文化が維持されているという点に引っかかるものを残すでしょう。
別段独裁国家なんだ!というような設定であればそういうものなのだと納得もするでしょうが、表面上は国民も事なかれ主義のような立ち位置として描かれていて、なんとも府に落ちない物語の幕開けです。
それらしいフィクションならではの設定も随所に見受けられはするものの、本来物語りの根本として展開されなければ、語られなければならないはずの現行の法律への問題提起とその行方は4巻まではほぼノータッチ。
この「国家繁栄維持法」に異を唱える者達が退廃思想者としてちょくちょく物語に介入してくるものの、本筋は若者の人生残り1日へとスポットライトをあてての俗に言われている「感動」の展開なのです。
当たり前ながら読み手からすればこの法律は作品内の言葉を使わせてもらうなら退廃思想としての立ち位置で物語をみるだろうし、そんな中で何の問題提起もされないまま生死のドラマにばかり焦点をおいて物語が展開されるので、感動以前にもやもや感を感じてしまう側面は否めないと思います。
私としてはいつか本題(法律の問題提起)が描かれるための布石なんだろうなと思いながら難しくは考えずに「いま、一番泣ける物語」をその視点で楽しんでいたこともあり、1巻目から通して楽しめていた口ですが、読む人にとっては上記に挙げた理由で楽しむことが出来ない人がいても仕方ないという印象でした。
発行ペースも平均して9ヶ月に1冊程度なので、3巻まで同じ一本調子で続いたことを考えると見切りをつけてしまう人がいても仕方のないことです。大枠では4巻辺りまででしょうか。
あえて問題提起を避ける現状を通して批判的精神を伝えようとしているという見方も出来なくもないですが、その展開は面白いを追求する読者にとってはナンセンスと思う次第。
……とはいえ、意識的に(ともとれる)感動を誘う構成と設定の下地に読んでいて噛み合わない気分を持つ人はいるでしょうが、私個人としては難しく考えずに作品を楽しもうという姿勢でみた場合には率直に面白い作品だと感じています。
物語の展開そのものと話毎の構成はもちろん別物で、構成は唸るほど上手く描写されており、絵柄も表紙だけでは分かりづらいですが硬派でいて表情の喜怒哀楽の表現が素晴らしいので作品に引き込ませるという点では抜群のポテンシャルを持っているように思います。
けれど個人的には女性描写が魅力的な描き方がされていないというか似たり寄ったりで魅力が感じられないという点は萌え漫画から程遠いジャンルの作品なのでそれでもいい気もしますが少し残念かなと思います。


と、言うわけで!

ここまで語っての4巻での仄めかし具合、そして5巻からの展開に注目しなければならないのが今作です。
主人公においてこの法律、国家の在り様は正しいのか彼の心の中での葛藤は物語当初からあったものの、その膨らみはこの巻にて一つの小さな形となって読者に明示されることになります。
とうとう本筋が語られ始めるのです。
5巻で描かれる2つの物語は、路上の壁などに超絶技巧でスプレー(こういうのをなんていうか失念してしまいましたが)をして周る男性のエピソードと「国家繁栄維持法」を崇拝している男性のエピソードです。
具体的にどう物語が動いていくかは実際にお読みいただいて欲しいですが、徐々に徐々に露になっていくその流れは期待感を高めさせます。
そして6巻では退廃思想者のレジスタンスの集団が物語りに直接的に関わってくることで加速度がつき、これからがこの作品の勝負所(注目所)なのかなと感じています。
人々が現行の法律、国家体制に表沙汰として疑問を持ち始めるのです。

しかしこの展開の移り変わりにこそ評価をしたいわけではなく、ここに至るまでの主人公の数少ない心理描写を表現するサブストーリーだった久保先生とのエピソードの集約が物語りの次ステップへの引き金になっている点こそが見事な点です。
重要なネタバレにはなりませんが、もしかしたら読む上で未読の楽しみをなくしてしまうことを書くかも知れませんので、以降ご注意下さい。そのことに言及したらレビューは終わりなので、少しでも作品の内容に触れるのを嫌う人は全くもって読まずにスルーで本屋直行お願いしやすっ!(何キャラw)







国繁サービスセンターの女性臨床心理士である久保 七湖(くぼ ななこ)先生は、主人公らのカウンセリングも受け持つセラピストなのですが、主人公は美人なこの先生に淡い恋心を覚えます。
食事もいく関係になり、主人公にとっては重苦しい仕事の毎日におけるオアシス。
しかし、その久保先生には退廃思想者と思しき不穏な言動が見え隠れしていて……。
仕事の直属の上司である石井課長は主人公の良き理解者なのですが、彼曰く配達員を含めた国家の人間を内から監視する極秘機関があるとかで久保先生には注意しなければいけないとのこと。
心をさらけ出したい主人公、けれど久保先生の立場がわかりません。
そういった気になる点においても現在レビュー時点での6巻は一つの作品の次ステップを明示しており、未読の方にとっては今から読み進めるには絶好の機会だと思います。
これが3,4巻目に至るまでの間で作品と付き合い始めた人にとってはタイミング残念感(自分も含め)は否めません。
思えばレビュー時でですが、昨年には映画化もされた今作。
劇場に足を運んだ私ですが、作品はとっても良かったです。
原作の初期の話を忠実に「感動」部分に比重をおいた作りだったことは仕方のないことですが、足りないと思わせられた要素、原作内での現行の法律の問題提起などから始まる既存世界の崩壊……、7巻以降に大注目の1作です。
6巻時点ではあるひとつの方向に向かって走り出し止まることは出来ないとも思わせられる展開になっているので、今後はまたトーンダウンするのか主人公が本来の主人公らしさを備えていくのか非常に目が離せません。
魂揺さぶる究極極限ドラマなんて表紙にはついていますが、私が心の奥で望んでいるのはがちがちに固められた理想世界を壊すアンチテーゼをサスペンスばりの緊張感をもってドラマチックに展開してくれることなので、やっと来たこの作品!

そう思いつつ、皆様と一緒に次巻以降を追っていければなと思っている次第でございます。

※新刊レビュー→7巻

※このレビューは6巻まで既読時のレビューになります


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Date:2009/03/25
Trackback:0
Comment:2

Comment

*

私も3巻まで読んで「なんだよ!ディストピアものじゃないのかよ!」と幻滅して離れたクチなのですが、どうやらやっと動き出したようですね。
ちょっと気になります。でも、とりあえず8巻ぐらいまでは様子見しようかな…。
2009/03/25 【いづき】 URL #-

*

>>いづきさん
やはり同じ調子だけだと幻滅しますよね。ようやっと動き出したのかなという所なので、8巻辺りまで様子見というのも十分ありな選択だと思います。
2009/03/25 【遠藤】 URL #2NFEem4w [編集]

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