漫画レビュー~遠藤ってば!~

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惑星のさみだれ

                紙芝居劇にしてはいささか幼稚過ぎやしないかという私の本音は抑えておこう

■演出力、これに尽きる■

「惑星のさみだれ」
作:水上 悟志
連載:ヤングキングアワーズ (少年画報社)
定価:¥ 600(一部¥ 590)


ストーリー:★★★★☆

画力:★★☆☆☆ 

キャラクター:★★★☆☆ 

構成力:★★★★★ 

遠藤のツボ:★★☆☆☆ 

                              総合:★★★☆☆

※詳しい評価基準はこちらの採点項目をお読み下さい


~あらまし~
平凡な大学生として日々を送っていた雨宮 夕日 (あまみや ゆうひ)。ある日、目覚めるとそこには人の言葉を操るトカゲがいて……。世界を救う騎士として選ばれたのだ、と彼に語りかけるトカゲ。世界を、地球を滅ぼそうとしている魔術師とそれを阻止するための騎士との戦いに巻き込まれることになった夕日の運命や如何に!?

~レビュー~
作品の空気感の表現力が特出していいなと思える今作ですが、私が一貫して感じたのは、「あ、漫画やってるなっ!」という気兼ねでした。そのポテンシャルは非常に高い。
もしかしたら何故3評価なんだ、4が妥当じゃないか?と思われる方が多いやも知れませんが、私の中で3から4に飛び越えられない何かというものを今回レビューしながら再認識、そして提示していければと思っております。
そうなんです、世間的には隠れた良作として評判も良く、ネット周りのユーザ―からは高い評価を受けている今作のように感じているのですが、私にとってはそこまで面白い作品だとは感じられていないのです。自分の感性との相性なのかちょっとまだわからない点も多いのですが、一定の評価をさせていただいているからこその3ということは言っておきたいと思います。
まぁしかしそれでもどちらかというと2寄りの3です。良し悪しをしっかり見ていければと思います、ではどうぞ。








まず始めにあらましの続きから整理していきたいと思います。

突然現れたトカゲが発する人の言葉、これが現実かも疑心暗鬼していた夕日でしたが、そんな折に敵のしもべである泥人形に襲われることになります。
泥人形のクリーチャーセンス、強殖装甲ガイバーのクリーチャーセンスが最高と思っている私からすれば物足りないものではありましたが、それでもなかなかどうして良い描写センスを持っているなと感じました。
ここで注視したいのは、ただの人間である夕日と敵の泥人形の実力差がまざまざと表現される点でしょう。
表紙画像を見ればわかるかと思いますが、絵柄は非常に軽快で少年漫画っぽい、語弊を承知で言うならば萌えではないけれど萌えの領域に入りかけているようなポップな絵柄だと思っています。
であるのに対して、作品を通して描かれる世界の危機の側面は緊張感のある描写でじりじりと表現されていくんですね。
それを最初に提示したのがこの泥人形の登場でしょう。
泥人形は感情が読み取れないある種無機質的な存在なのですが、確実に夕日を殺すであろうアクションを起こしてきます。
死への生々しさ、緊張感の演出力の高さ、ビビッと来る人には鷲掴みで作品の世界へ引き込まされていくことでしょう。

さて、絶体絶命のピンチで現れて彼を助けることになる人物が今作のヒロイン・朝日奈 さみだれ (あさひな さみだれ)です。ここいらで当人達を確認するならば、表紙画像の女性がさみだれで、男性が夕日、夕日の頭に乗っているのがトカゲです。
このさみだれ、実は夕日が騎士として選ばれた正義側の守るべき姫という存在で同じく選ばれた人物であるとのこと。
姫特有の強大な力をもっているさみだれですが、彼女の思惑は世界を守ることには向いていないようで……。
この辺りの相関図は実際にお読みいただいて確認していただきたいと思います。
彼女の素顔の一面を垣間見た夕日が、彼女に服従を誓って騎士として巻き込まれた戦いに身を投じていくことになります。この主人公とさみだれだけが胸にしまう最終目的が作品の集結への不安と期待を煽ります。

作品にはファンタジーの世界観もほどよいバランスで入っており、世界を守る正義側の陣営は夕日とノイ(トカゲの名前)のように動物と人間の契約によって騎士が選出されます。
この動物が相棒ということになるのでしょうが、犬だったりカラスだったり亀だったりネズミだったりと可愛らしい動物達が作品に大きく関わってくるようになる点もギャップとして魅力を添えているでしょう。
敵との戦いのパートは至極緊迫した状態で描かれながらも、次第に集う指輪の騎士と呼ばれる仲間達との日常パートがゆるいコメディとして挟まれるなど、今作はギャップに徹底した作りがなされており、何とも不思議な魅力をかもしだしているなと感じました。
また、本筋の世界の命運をかけた戦いの側面以外に各キャラクターの成長物語を丁寧に描いている点も◎。
縛られているものからの脱却というようなものを据えて展開されるエピソードの数々は一定水準の話のレベルを超えた面白さを提示してくれることでしょう。
ファンタジーの良さを全面に出すのではなく、緊張感のある演出のなかに登場人物達の心情心理を豊かに描いていくリアル路線の混ぜ合わせ方は作者の技巧のセンスが感じられる点だと思います。
例えばこれが主人公だけの葛藤や成長にだけスポットがあてられたものであるならばここまで全体としての魅力を底上げする要因にはなっていないでしょう。
夕日の仲間となる指輪の騎士達のエピソードなども掘り下げて描かれていくので、その引き立て方というか演出力は唸らせられるものがありました。
ただ、何と言っても夕日の過去話から繋がっていく成長物語は必見です。
現在レビュー時点では7巻までが発売されていますが、巻を追う事に成長してゆく夕日の段階の魅せ方などはテンポが巧いなと。

そして、今作の演出という面で話をさせていただくのならば、命の描写というものを緊張感を引き出す敵側との戦いで抜かりなく描いている点は流石。
夕日達が始めに出会うことになる犬の騎士・東雲 半月 (しののめ はんげつ)の登場のさせかたは王道にして良い演出です。
普段は飄々とした青年である東雲ですが、騎士の力を使いこなせない夕日の師として成長を見守っていく存在になります。
この東雲がとにかく強い。一人で敵側を全て倒せるんじゃないかってくらいに。
実際にお読みいただき刮目して欲しい点にはなりますが、彼の生き様が今作の緊張感あるやり取りを象徴する存在になっていくことは確かでしょう。



そんな流れで物語りは進行していくのですが、実は物語の設定がファンタジーとリアルを掛け合わせた面では非常に興味深いものがあります。
世界を滅ぼすといわれる力を有している魔法使い・アニムス。惑星を砕くとされている巨大なハンマーを操り、しもべの泥人形を駆使して野望を達成しようと主人公達の前に立ちはだかります。
実は彼の妹こそがこの戦いで指輪の騎士側を率いる精霊で首領のようなポジションなんですね。さみだれに姫としての力を与えたのがこのアニマという存在。
この繋がりとまるでゲームのように世界の命運の戦いを語るアニムス。
そして騎士の従者である動物達からも語られることではありますが、夕日らが巻き込まされることになったこの戦いは今回が初めてではないという点。
何度も同じ世界の命運をかけた戦いが繰り広げられていた……?
これにはアニムスの存在が大きく関わってくるのですが、物語の設定としてはよく練り込まれていると手放しに評価していいものがあると思います。




と言ったところで褒めっぱなしとみせかけて、ここからは私が率直に感じた点も触れられればと思います。
まず一言で言い表すならば「ままごと」を見せられているかのような、寸劇の延長上の話を見せられているかのような稚拙感がどうしても拭いきれないという点。
緊張感ある展開と絵柄が個性という点で噛み合う一方、展開の演出力に絵柄がマッチしていないというか追いついていないような感覚を感じました。
登場人物が皆、達観し過ぎているという側面もこれに関係しているのかなと思います。感情の乱れが少ないというか希薄だと舞台の上で劇を演じているかのような乾いた感じが出てしまうというか私にはそう映る側面がありました。
とはいえこの辺りは作者の技巧の成長によって6巻辺りで華開くというかマッチングしてくる感覚は感じましたが、しかしです。
そもそも緊張感ある展開と演出がここまで出来ていれば本来はもっと胸にグッとこさせるはず、なんですよね。
6巻の盛り上がる展開がターニングポイントになっているのは間違いないとは思いますが、それまでにも演出面で光る描写は何度か出てきます。
ただ、感銘を受ける一歩手前までは心に伝えてくるものがあるのですが、総じると私の中では秀作・傑作にまでは届きません。
具体的に言葉にするほど明確な感覚ではないのですが、読んだ人にとっては演出面の技巧は高いけれどそれを昇華させるまでの画力や物語の魅せ方・補い方が足りていない惜作と見る人もいるであろうことをここに記しておきたいと思います。
絵が下手というよりは作風として確立している絵柄ではあると思うのですが、やはり作者の絵柄では表現力に限界があるんじゃないのかな、と。
後一歩突き抜けて感銘させられるには視覚としてのインパクトが拙い。
その分をストーリーの構成や巧みさで補うしかないとも思うわけですが、それが6巻辺りからは徐々に実現出来はじめているように感じました。
よく涙したとかその展開にかけて意見を目にするのですが、言いたいことは私もわかるんですよね。
演出がグッとこさせる巧さがあるので。
ただ、やはり私にとっては「ままごと」感は拭えず。これ以上を求めるのはどうなんだという気兼ねもありますが、もっともっと今作が面白くなってくれれば読者としてはうれしいなと思います。




さて、そろそろまとめたいと思います。
物語の中には登場人物の台詞回しによっても道徳観だったりを漫画という媒体を最大限活用して伝えてくる面もあり、演出面や物語の構成の巧みさは特出していると言えます。
一見青臭いことを言っていると感じられる点も漫画だから表現出来ているものだと思うと見事。
上記で挙げましたが、登場人物陣が何故か達観している者が多いというか、だからこそそういった名台詞が飛び交うのかも知れませんが、その達観さ具合というか乾いた感じが枷になって手放しに夢中になれない作品にもなっているように思います。
絵柄を確立している作風に合ったものだ、とすれば読む人にとっては私が感じた評価より作品の面白さを感じることが出来るでしょう。
そもそもが非日常ファンタジーとしての世界観は見事に表現していた作品です。展開も熱さを備えており、バトル作品として見ても一定水準を超える良作でしょう。
今作に限って言えば初期の巻数では絵柄が物語りに追いついていない違和感を強く感じましたが、最近の数巻ではそのズレも少なく、作品の世界観を遺憾なく発揮しているなと私も感じています。
どのような盛り上がりを今後見せるのか、現時点では終盤に突入し始めたように思いますが、その展開によっては今後評価を改めさせていただくことも視野に入れています。

巻を追う毎に面白くなっている作品だからこそ、周りの読者の期待もどんどん高まっていくのでしょうね。
連載元の出版が少年画報社ってことで、もう少しメジャーな少年誌で連載していたとしたらどうだったのだろうかということはやはり考えてしまいます。
恐らくは今の連載誌だからこそのこの不思議な世界観を構築し得ているのだとは思いますが、確かにもっと評価されるべきというようなことはあるのかも知れません。

ただ今作を隠れた良作として評価している自分かっこいい!のように鼻にかけてるような人は私は嫌いです

ただ、最高傑作とか最近読んだ漫画の中では一番面白いとか、いくら何でもそれは持ち上げすぎだろとも思っている私がいることを主張しつつ、締めとさせていただきたいと思います。


※このレビューは7巻まで既読時のレビューになります


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Date:2009/06/23
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