漫画レビュー~遠藤ってば!~

□ スポンサー広告 □

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


* 「スポンサー広告」目次へ戻る
*    *    *

Information

□ 恋愛・青春漫画好きへ □

オクターヴ

                もっともっと心理描写の爆発がなされればもっと悶えれると思う

■同性愛のリアルへ自然に歩み寄った百合開拓作■

「オクターヴ」
作:秋山 はる
連載:アフタヌーン (講談社)
定価:¥ 570(一部¥ 560)


ストーリー:★★★☆☆

画力:★★★☆☆ 

キャラクター:★★★★☆ 

構成力:★★★★☆ 

遠藤のツボ:★★★★☆ 

                              総合:★★★☆☆

※詳しい評価基準はこちらの採点項目をお読み下さい


~あらまし~
15歳で田舎を出て芸能界でアイドルグループに所属した宮下雪乃(みやした ゆきの)。しかし売れず、結局田舎に戻ったものの学友の奇異な目に耐えられず高校を中退してしまいます。行き場を失った雪乃は舞い戻るようにかつての事務所で雑用・マネージャーとして働くことになります。見えない先行き……、そんな折に元ミュージシャンで現在は売れない作曲家の岩井節子(いわい せつこ)と出会います。クールでどこか飄々としている節子、距離を縮める二人、現実的な生活に身体を委ねるなかで彼女達の心情の揺れを正面から描きます。

~レビュー~
俗に言われる百合漫画なわけなのですが、方向性がわからないと何とも言えないと思うので、私なりに感じた面からも話せていければと思います。
それにしても百合専門誌から出る1巻読みきりの百合作品とは違った魅力が爆発してるなぁとも思いますし、ここ数年では巻続きになっていく作品も多いので、より百合作品も広義へのアプローチが蔓延し始めているのかななんてことを今作を読むと思ってしまうんですよね。
今作には百合漫画でいわれる所の2つのかけ離れてしまいがちな要因が交わっているのが新鮮だなと感じています。
まずはその辺りに絡めながら話を切り出していくことにしましょう。




私はどちらかというと精神的な虚ろぎや儚さを主軸に心理描写を巧みにまとめる辺りに百合漫画の良さを求めるのですが、今作に至っては見事にやってくれたなという気兼ねを感じています。
二人の恋愛という関係性において身体での交わりを念頭に提示したんですね。

本来の百合漫画の道筋では考えにくい斬新な切り口で作品は幕を開けていきます。
でもそうなるとどうなんだろう?と思う要素が心理描写のフォローの描き方です。
今作では身体の交わりから入り、1巻では雪乃の心の行き所を丁寧に、そして現実的に描いていきます。
そして2巻では節子の心理描写が広げられていき、読者としてもこう感じるはずです。

心理描写も抜かりが無い、と。

1巻だけではいまいち雪乃だけががっついているようで安心して作品に身体を預けられないなーって感じなのですが、クールな節子が実は可愛い焼きもち屋だったりという側面が2巻で出てきて、もう萌え悶えですよね。
身体の交わりが最初に提示されるわけですが、心理面でのフォローも差し込められるので、より現実的な世界観での百合の空気というものが作品から感じ取れることと思います。
台詞や心情など細かなカットインですが、それがあるからこそ百合本来で言われている良さを求める層も納得させれているんじゃないのかなと思います。
百合ジャンルはファンタジーなのか、否!ってな具合ですね。
それでいて精神的な描写も忘れない配慮。

一言で言えば斬新、です。

また、百合漫画においてその定義を現実的な側面で思考できる提起の要素としてちらと差し入れられている点も、リアル路線支持の読者にも本来の百合の良さを求める読者にも目配りしている感じで読むものの意識を考えて描かれているんだろうなということを垣間見ました。
女性と女性が恋愛をすることが百合という言葉ではなくて同性愛という言葉でしっくりくるような現実感。
雪乃の数少ない友人が雪乃がそっち系だったことに対して受け入れながらも否定的な発言をするシーンなどは作品の方向性に磨きがかかっているようで巧いなと感じました。
作品に流れる空気は一貫していて、百合だけれども本来の「恋愛」漫画においての視点で客観的に捉えているので、そういう一貫性というのはお見事な世界観の構築だと思います。

また伏線の張り巡らせ方と回収のバランスも地味に良いです。
具体的な内容は書けませんが、雪乃は当初から男性を凄い毛嫌いしている節を見せるんですね。
それはもう読者が読んでいて、ちょっと心配するぐらいにはっきりと意思表示として描かれます。
なんていうか相当のコンプレックスですよ、これは。
ですが巻をまたいで異性との兼ね合いを心理描写でぐいぐいと意識させていき、主に発起元は節子の弟ではあるのですが、それが2巻の最後では爆発する。

どう爆発するかは読んでくれぃ!という感じですが、色んな意味でザックリと描写されていきます。
一言で言うと、百合漫画において異性関係をふんだんに混ぜようとしているんだなというこれまた殻破りな提示。

本来、百合漫画において異性関係が混ざるということは断じてとまではいかないかも知れませんがご法度です。
そりゃぁ女の子同士のイチャイチャが見たいのですから当たり前といえば当たり前ですが(笑)

ただし今作のような生々しい百合においては異性の恋愛スパイス分は作品の魅力を底上げするにはもってこいの、奥の手とまでは言いませんがそれと似たような隠し駒的な武器でしょう。
読者の心を揺さぶってなんぼっていう側面が強いと思います。

本来の百合好きにとっては新しい風を運んでくれていると同時に正面からの描写ばかりで腑に落ちない気分を持ってしまうかも知れません。
逆に百合云々に執着がない人が読めば、心理描写の描き方と展開の速さが心地よく本来狭義の層向けの百合というジャンルに触れながらも面白さを広義的に感じさせてくれる要因になるかも知れません。

主人公視点でこの作品を捉えるならば、先行きが全く見えない不安と無常に流れていく時間、そして心を通わせて宿木を見つけたかと思ったら異性のスパイスにより乱れる精神、今後は……!?

一つ言える事は3巻の展開如何によって評価が分かれることになるだろうなーということでしょう。
ターニングポイントを早い段階で作ってしまっているので、単行本派としてはまさに注目の次巻待ちって所か。


そろそろまとめに入りたいとは思いますが、いちおう注意をしておくと今作はセックス描写があるっちゃーあるので、そういう要素が苦手って人は気構えはしていたほうが良いです。
とはいえそんなに苦手と思う人が感じる負な部分は見受けられないとは思いますが。
感情の虚ろぎと不安定さの描写のポテンシャルが非常に潜在的に高いので、3巻以降どうなっていくかは本当に興味深いです。
2巻である種の節子のデレを見せられている以上は、すったもんだあっての終着は期待せざるを得ないというのが本音ですが、その展開を裏切ってきてもなお私は評価したいなと現時点では思っています。
百合漫画に凝り固められている人にとっては展開如何で駄作になってしまうかも知れませんが、大枠としての漫画作品として良し悪しを見つめていきたいものだと、そう強く思います。
展開に込める空気感の揺れ動きなど繊細な技巧は見事ですし、百合のハッピーエンドなのかバッドエンドなのかだけに捉われた作品の判断はしてはいけないような気兼ねをもっています。

そういえば百合作品というものはどうしても学生時代の未熟な果実的な展開で、優しく包み込まれるように展開する作品が多いですが、社会人の世界という舞台装置で展開しているのも作品の現実嗜好にとても合っていて、下地を作るのが巧いなぁと感じています。

本音を言ってしまえば学生時代のその後としてイチャイチャ系でありながら巻続きのような秀作が出てくれれば個人的には百合、始まったな!まさにヘブン状態なんですが(笑)、今後の百合漫画の方向性の多種多様さが垣間見れる、そんな気持ちを抱かせてくれるのが今作ではないでしょうか。

最後にぽつりと吐くならば、今作がきっかけで百合にはまるなんて人はいて欲しくないなぁとかも思います。
やっぱり方向性はまだまだ現行の百合漫画はアナログテレビって感じで、今作で気に入って足を踏み入れるような多種多様なジャンルではまだないかなと個人的には感じています。
それでも最近の作品は目新しいアプローチや有望な作者も出現し始めてはおりますが。

ただ難しいですよね、この辺りのさじ加減というのは。
だからこそ、今作のようなアプローチの作品が百合ジャンルで出現し始めたことは、ある種の改革夜明け前夜みたいな風情が感じ取れて個人的には意欲作として高く評価したいと思ってます。
とりあえず次巻を待て!という所で締めさせていただきたいと思います。

※新刊レビュー→3巻

※このレビューは2巻まで既読時のレビューになります


* 「恋愛・青春漫画好きへ」目次へ戻る
*    *    *

Information

Date:2009/07/10
Trackback:0
Comment:0

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback


+
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。