漫画レビュー~遠藤ってば!~

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鈴木先生

                麻美さん可愛いよ麻美さん

■読むと疲労困憊!濃縮理性論議に酔いしれる!■

「鈴木先生」
作:武富 健治
連載:漫画アクション (双葉社)
定価:¥ 860


ストーリー:★★★★☆

画力:★★★☆☆ 

キャラクター:★★★★☆ 

構成力:★★★★★ 

遠藤のツボ:★★★★☆ 

                              総合:★★★★☆

※詳しい評価基準はこちらの採点項目をお読み下さい


~あらまし~
中学校の教師である鈴木先生が持ち前の理論による問題処理能力を最大限に生かし、学生生活の生徒間で起こる問題に対処・解消していく教育作品です。一見すると些細に思えてしまう学生時代特有の悩みや問題ですが、切り詰めていくとこどもの成長期においてとても重要な意味を成すものばかりであるということがわかります。作者の主張を鈴木先生の教育理念に託して、今日もまた鈴木先生は生徒と同じ土俵で教育という名のフィールドを情熱的に駆け巡ります。

~レビュー~
始めに言っておくと、難しい作品です。
色々な意味で難しい。
読み解くこととして難解だということも言えるだろうし、評価が二分するような意味でも難しい。
先に抽象的な話が中心となってしまいますが、作品の外郭の話からさせていただきたいと思います。



今作は舞台を教育現場としていますが、結局の所は作者の価値観や理念を表現する場としてこの舞台を選択したという側面が強いようにも感じ、だからこそ根本として作者の主義主張に読者が噛み合わなければ面白い作品にはなってこないと思います。
そんな側面がある、という話ですね。

今作を一言で言い表すなら濃密
展開される価値観や理念も、反論意見を据えての展望を乗せて語られるので、読者は思わず納得してしまうでしょう。
文学的というか本来学術的な論文を読み解く醍醐味みたいなものを漫画にスライドして読み解くかのような感覚を覚えるわけで、読み解いて始めて作品の良し悪しを感じることが出来るという濃密さは、正直小難しいという感慨も覚えますし、漫画として表現出来得る凄みは素直に驚嘆すべきものでもあると思っています。

取り分け今作に至っては教育漫画として実直なドラマとして評価をする人もいますし、ある種のギミックや話題の選択性、そして鈴木先生の内面の描写が突き抜けている要素をギャグ漫画にみるそれとして評価する人もいますし、そもそもが作者の、鈴木先生の価値観に共感するか抵抗感を抱くかによっても評価は分かれるでしょう。
なもので、非常にレビューする人により多種多様な様相を呈しています。


今作の主人公となるのは上記の表紙画像にもなっている鈴木先生その人です。あえてインパクトのある3巻目を選んでみましたが(笑)、絵柄は独特と言っていいと思います。
一昔前の劇画のようなタッチですが、絵柄に抵抗感を覚えるというようなことはないと思います。現代の絵柄と劇画を掛け合わせた画風なので、その辺りは大丈夫でしょう。
表紙で書かれているインパクトよりは作品内は馴染める画風だと思います。


さて、現在のレビュー時点では7巻まで発売されていますが、探り見という観点では1巻目と2巻目まで読む必要があるでしょう。
1巻目と2巻目までで作品の柱となる良し悪しを垣間見ることが出来ます。
それを中心としてみていきたいと思います。
ただし、多少の中身の話に対する言及をしなければこの鈴木先生という作品を語るのは難しく、話の道筋を話させていただくことをご了承いただければ幸いに思います。



1巻目では若いながらも数年の下積みを積んだ新進気鋭の中学教師・鈴木先生と担任クラスの生徒達とのやり取り……すなわち本作の下地が提示されることになります。
およその巻毎の平均は2エピソード前後といった所で、その数の少なさが本編の1つのエピソードに傾けられている表現の濃密さを垣間見ることが出来る点だと思います。
1巻に入っているエピソードは3つ、

・げりみそ

・酢豚

・教育的指導

です。

げりみそ……ゴクリッ。

げりみそと酢豚のエピソードでは給食中に起こってしまった生徒の苦悩を謎かけとした趣向で、鈴木先生が解決へ乗り出します。
げりみそでは親が学者で礼儀正しいと思われてた生徒の一人・出水が給食中に食べ物に対してげりみそ等の発言を繰り返し周りの生徒を不快にさせたことが発端になります。
鈴木先生は出水を叱り付けるわけではなく、何故出水がそういった行動を取ったのかを独自の思考によって究明していくことになります。
何としても真実にたどり着かなければならないのだと先を見据える鈴木先生のカットからは、この物語が鈴木先生の導く答え……というより問答を読者がありのまま受け止めていくことを前置きされるかのような錯覚を感じさせてくれます。
あぁ、考えて読んでってことなのか、そういう雰囲気。
この謎解きがどういう結果を向かえるかは実際にお読みいただきたいと思います。

酢豚では給食のメニューから酢豚が不人気のために無くなってしまうという危機に面して、酢豚が大好きな女生徒・樺山が廃止の是非というより非を問うことが発端になります。
メニューを存続する架け橋となって奔走する鈴木先生。
たどり着く答えとはどんなものかは是非お読み下さい。

さて、この2話から感じ取れること、それは何でしょう。
その背景には普段の家庭での環境に起因する教育や理念ともいえる思想のあれこれを読み取ることが出来るでしょう。
読み進めれば分かるはずですが、提起される問題というのは人によって至極ささいな出来事が発端になっていることが多かったり、一度は論争しなければならなような社会的テーマだったりが大半になります。
誰もが一度は経験をしたことがあるような想いや疑問。
それが作者の手法によって話を広げ、よりドラマチックな展開として鈴木先生を介し作者の代弁が為されていきます。
生徒が涙ながらにその事象に向き合う側面などは過剰表現のような気もしますが、それを自然な印象として魅せる巧さは流石。


次にエピソード、教育的指導を掻い摘んでみていきましょう。
このエピソードにて上記で挙げた作者の手法は爆発します。
始まりの描写は至極、前衛的です。
クラスの美少女・小川を夢の中で女として意識する鈴木先生のカットが入ります。

いかん、あぶないあぶないあぶない……。

そんな早朝のカットを暗示させるかの如く、鈴木先生の担当する2学年の男子が問題を起こしたことが告げられます。同級生の妹で小4になる少女と「やってしまった」というのです。
鈴木先生はこの問題の対処をすることになり、親と生徒を合わせた中で独自に培ってきた思想と観念を言葉巧みに提示していくことになります。
どう落ち着くかは実際にお読みいただければ。

と、1巻を上辺だけ辿ってみました。
端的に言い表すならば、一般的には考えるだけで留めてしまうような観念を作者の明確な思想として掘り起こして言語化している、これが魅力だと言えるように思います。
本来は文学の分野で体感するような思想の組み立ての構築の感覚を、漫画という土台に持ってきた斬新さというか前衛さ。
だからこそ読み進めていくのは知恵熱が出るような頭の回転を強要されてしまう側面があるけれど、読んだ時の醍醐味が得られやすく、またその作者(=鈴木先生)の主義主張も反論があることを想定したものになっているので抜け目が無い。


では2巻の内容はどうでしょうか?
1巻ではその塗り固められた論述家のような思想を教育現場という舞台で構築することに成功していてそれが魅力であると思われていましたが、2巻では鈴木先生の思想への揺らぎとしての提起が描写され始めます。
鈴木先生の教育に対する姿勢は正しさそのものであるようにも思えますが、2巻の始めでは先生らの人気投票が生徒の間で行われ、それが元で鈴木先生は大変な心労を覚えることになります。
そして、鈴木先生の姿勢こそが正しいというわけではないということを卒業生の来訪から映し出していくのもこの2巻で描かれます。
作者が展開しようとしている主義主張には絶対の信念を持っているだろうことは伺えるのに、それをあえて揺らぐ描写を入れることで読者をより作者の思想に取り込むかのような道筋を立てているのには唸らされるの一言。

しかし、2巻以降で語られる要素によって読者によっては拒否反応を起こしてしまったり懐疑的な思いを持たざるを得なくなる側面があるように思います。

ずばり、鈴木先生の内面です。

2巻の後半では生徒間の恋愛の問題が大きく取り沙汰されることになりますが、1巻の後半であった美少女・小川を巡る鈴木先生の内面が2巻以降は常に強く描かれることになるのです。
端的に言い表すならば教師が生徒に恋愛感情を抱くという禁忌の一種を鈴木先生の内面を曝け出して描写されていくことにあります。

現実的に捉えれば、ここまで生々しく生徒のことを想うような先生に、こどもの教育を任せられはしないというのがあると思います。
だからこそ、その描写が強くされていきながらも信念に基づいた教育的主義主張は理に適っているというような不安定な鈴木先生を現実的観点で見てしまった場合に、言葉では言い表すことが難しい嫌悪感を感じてしまう側面があるように思います。
漫画としてのみ見れればいいのでしょうが、それにはあまりにも今作はリアルに提起し得る主義主張で固められています。
そして、「性」というテーマは以降の巻数ではさらに濃密に展開されていくのですが、鈴木先生自体の道徳的思想が教師の枠を遥かに突き抜けた所にあるために、その現実と比較した際の教師像の違和感は、読む人にとってどんどん膨れ上がる可能性もあります。





これ以上は話が交錯し過ぎてわけがわからなくなるのでそろそろまとめましょう。
今作は鈴木式教育理念の秀逸な論議に頭を刺激されつつ、鈴木先生の性のあれこれを如何にギャグ漫画にみる良さとして感じ得れるかに面白さの深みを感じることが出来るか否かがかかっているように思います。

今作は巻数を重ねるごとに読者も、作品内の生徒達も鈴木先生の思想に染まっていくことになるでしょう。
中学生という多感な時期だからこそ表現出来ているという側面も強く感じます。
全てのエピソードは完全な解決という着地はしていないという点や物語が地続きで巻を重ねるごとに成長していく点などは活きた漫画を強く感じさせてくれます。

単行本で読んだ際の疲労度と満足度は数多ある漫画作品の中でも屈指になるかと。

そう、ここまで語ってきて一言にまとめると濃密な面白さを有する漫画であることに集約するんですね。
今までの内容では、じゃぁストーリー漫画やギャグ漫画にみる良さしか体感出来ないのかとも思ってしまうのですが、これがまた萌え悶えまでカバーしているのだから恐ろしいなと思います。

上記でも名前が出てきた小川を筆頭に、中村という女生徒だったり鈴木先生の恋人として出てくる麻美さんだったり特にこの3人の萌え悶えのポテンシャルには驚愕です。
読めば分かる、ということでその辺りの描写もにくい演出がされているので、堅物な理路整然とした教育漫画のようなイメージに凝り固まることなく読み進めていって欲しいと思います。

4の理由ですが、深く語らずとも上記の良し悪しを垣間見れば分かっていただけるのではと思っております。個人的にはこれが5でなかったら何が5なんだという気兼ねもあるのですが、漫画本来の爽快感を重視した時に必ずしも今作は万人向けではないという判断の元での位置になっています。

抽象的な話にはなりますが、漫画読みであるならば手元に置いてじっくり読むべきだと思わせてくれる意欲作であることは間違いないと思います。
話題になってるのは知っているけれどまだ手を出していないなぁなんて人は、今集めようとしている作品を押しのけてでも先に集めるべきだと主張した所で締めにさせていただきたいと思います。

鈴木先生の観念はまだまだ語りつくされておらず、だからこそどんな論議が待ち構えているのか。
読者としての探究心はまだまだ尽きません。

※このレビューは7巻まで既読時のレビューになります


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Date:2009/07/24
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